テナントを借りる際、火災保険や総合保険の相場、加入義務があるのかと考えたことはあり
ませんか?
結論から言うと、テナントの火災保険への加入は必要です。明確に義務と定められているわ
けではないですが、不動産会社または建物の所有者から加入を前提とした案内をされます。
加入しないと貸せないケースも。しかし、保険の相場や補償内容が不透明で不安に思うこと
もあるかと思います。
この記事では、火災保険や総合保険について把握しておくと良い点、相場や加入義務につい
てご紹介します。
テナントの火災保険とは
テナントの火災保険とは、火災等の被害を受けた場合に建物と家財の損害を補償する保険で
す。貸主が入る保険とは異なり、借主自身が加入する必要があります。
また、将来の損失を最小限に抑えるために欠かせない重要な保険ですので、火災保険に加入
する際は、必ず損害をカバーできる補償内容であるか等確認すると良いでしょう。
火災保険の目的と重要性
■加入の目的
火災による損害やリスクから建物や什器などの財産を守り、周囲の建物や人、物に生じる損
害に対する経済的な補償を行うことです。
■加入の重要性
加入せずに火災等が起きた際、損害賠償などを求められてしまうケース、自分では注意
していても隣近所からのもらい火による火災が発生、損害が生じてしまうケースなど原因が
自身によるものか否かに関わらず、加入をすることでさらなる損失を防ぐことが可能となり
ます。
火災保険に加入する際の注意点
火災保険に加入する際の注意点は以下の3つです。
- 備品、什器類を把握する
- 他の入居テナントの数を把握する
- 休業中の利益の相場を算出する
といった補償内容を確認する必要があります。
火災保険の補償範囲。補償対象外はどんな時?
テナントの火災保険は火災のみではなく、自然災害をはじめとした様々な損害に対して補償
されます。
一般的に火災保険の補償範囲となるものは以下です。
- 火災・爆破・破裂
- 落雷
- 風災・ひょう災・雪災
- 水漏れや水濡れ
- 盗難
ここでは、補償範囲となるもの、補償対象外となるものをそれぞれご紹介していきます。
火災・爆破・破裂
貸主や借主の失火・延焼等による火災事故、ガス漏れ等による破裂・爆破の損害などを補償
します。火災保険においてベースとなる補償で、どの保険会社のプランにおいても必ず補償
される項目です。
落雷
テナントの火災保険には、上記の項目とともに落雷も基本補償に含まれます。落雷によって
店舗の屋根材が破損したり、建物が燃えた場合など建物や備品・什器等が受けた被害は火災
保険で補償されます。
風災・ひょう災・雪災
突風・強風・竜巻・台風などの風災による損害、落ひょうやあられの氷の粒・塊による損
害、雪の重み、雪の落下等による事故または雪崩により建物や什器等に損害が生じた場合に
補償されます。
水漏れや水濡れ
建物の給排水設備の故障や破損・詰まりにより発生した水漏れ、放水等により、建物・什器
等に損害が生じた場合に補償されます。
【補償対象外】地震による火災・損害
地震はテナントの火災保険の補償対象外となります。
理由としては、以下が挙げられます。
- 地震の発生確率や建物等の損害額の予測が困難
- 損害が広範囲に渡り損害額が莫大になる
そのため、地震による損害に備えるには、別で地震保険への加入が必要となります。
テナントの総合保険とは|補償内容は 4 つ
テナントの総合保険とは、テナントの財産や賠償責任を補償する保険です。テナントでの火災、盗
難、賠償責任等テナントが直面するリスクを補償します。
一般的にテナントの総合保険とは以下の 4 つを指します。
- 「設備・什器等補償」
- 「修理費用補償」
- 「借家人賠償責任補償」
- 「施設賠償責任補償」
ここでは、テナントの総合保険の 4 つの補償内容についてご紹介していきます。
1.「設備・什器等補償」
テナントで火災が発生し、延焼や消化活動時の水浸しにより、設備や什器類が損傷・破損し
た場合の撤去・再調達費用の補償、また、盗難・自然災害・偶発的な事故の補償も含まれま
す。(洪水、台風など)
火災だけじゃない。
盗難・自然災害・偶発的な事故も含まれる(洪水、台風など)
特に火を扱う飲食店に対して加入するメリットが高い補償です。
2.「修理費用補償」
修理費用補償とは、貸主に対しての損害賠償責任はないものの賃貸借契約に基づいて修理し
た場合の修理費用を補償するものです。
3.「借家人賠償責任補償」
借家人賠償責任補償とは、テナントの貸主に対して負う賠償責任を補償するものです。
4.「施設賠償責任補償」
施設賠償責任補償とは、設備や施設を破損・損壊させた場合の賠償責任を補償するもので
す。
テナントの総合保険と火災保険の違い
テナントの総合保険と火災保険の違いは、『補償の範囲』にあります。
総合保険は、設備・什器等の財物、事故による休業損失や営業継続費用、損害賠償責任費用
等テナントで生じる万が一のことに対して補償を受けることができます。
テナントの火災保険料の相場とは?安く抑える方法も解説
皆さん火災保険の相場はいくらなのか、保険料を安く抑える方法はないのかと考えたことが
あるのではないでしょうか。
テナントの火災保険の加入を検討する場合は、保険料の相場だけでなく補償内容をよく吟味
して過不足のないものを選ぶ必要があります。
ここでは、テナントの火災保険料の相場と保険料を安く抑える方法を解説していきます。
テナントの火災保険の相場
テナントの火災保険は、業種・補償内容等によって保険料の金額が変動します。また、賃貸
借契約と合わせた 2 年契約の保険が多く、小規模店舗の場合は、年間 1〜2 万円程度が相場
です。
火災保険料を安く抑える方法
火災保険料を安く抑える方法は、主に 2 つあります。
1.特約を見直す
火災保険に特約を付けることで、リスクを最小限に抑えることができますが、その分保険料は高額になります。保険料を安く抑えるには、特約と保険料とのバランスを考慮すると良いでしょう。
2.自己負担額を見直す
自己負担額を上げることで保険料を下げることができます。ただし、自己負担額を上げる際
には、保険金支払い時の負担も考慮して決めることが重要です。
テナント契約時、火災保険への加入は義務?加入しないとどうなる?
テナント契約時、火災保険への加入義務はありませんが、火災保険に加入していないと、火
災による損害や損失に対して補償を受けることができません。
万が一、建物に火災が発生した場合、修理や損害賠償、財産の損失に対する責任を全て負う
こととなります。
火災保険に加入することで、様々なリスクから身を守ることができます。
火災の損害補償
火災保険の損害補償は主に以下の3つです。
1.建物への損害
2.什器・備品などの財産の損害
3.責任保険
それぞれご紹介します。
1.建物への損害
火災によって建物が損傷した場合、修復等の原状回復費用が補償されます。
これには建物の構造、壁、屋根、床等への損害が含まれます。
2.什器備品などの財産の損害
テナント内にある設備や什器等の財産が火災で損傷した場合、撤去・再調達費用として補償
されます。この場合、損失した財産の価値に応じて補償されます。
3.責任保険
火災が他テナントまで延焼し、それにより第三者に損害を与えた場合、賠償責任が補償され
ます。
テナントの火災保険|借主が入る保険とビルオーナーが入る保険
借主とビルオーナーが入る主な保険には以下のようなものがあります。
借主が入る保険:借家人賠償責任保険、個人賠償責任保険、家財保険
ビルオーナーが入る保険:建物火災保険、賠償責任保険
ここでは、借主とビルオーナーが入る保険についてそれぞれご紹介していきます。
借主が入る保険
借主が入る保険には、以下の3つがあります。
- 借家人賠償責任保険
- 個人賠償責任保険
- 家財保険
1.借家人賠償責任保険
借主の不注意で事故が発生した場合に貸主に対して損害賠償を補償する保険です。この保険
で補償できるケースは火災だけでなく、爆発・破壊・水漏れなども含まれます。
2.個人賠償責任保険
他テナントに対して損害賠償を補償する保険です。この保険は、誤って他テナントの財産を
破損したり、怪我を負わせてしまった場合に補償されます。
3.家財保険
テナント内の備品・什器など借主の財産に対して補償できる保険です。この保険は、火災や
爆発、水漏れ、落雷、盗難などが損害対象となります。しかし、中には補償対象とならない
ものもあるので注意しましょう。
経費削減のために保険料を安くすることを検討してしまいがちですが、万が一のことを考え
ると上記の火災保険の 3 つの特約は加入しておいた方が安心です。
ビルオーナーが入る保険
ビルオーナーが入る保険は、以下の2つです。
- 建物火災保険
- 賠償責任保険
それぞれ紹介していきます。
1.建物火災保険
建物を火災や自然災害、盗難などから保護するための保険です。
2.賠償責任保険
ビルオーナーが賠償責任を負うリスクに対処するための保険です。
この保険への加入義務はありませんが、万が一の時に備えて加入しておくと良いでしょう。
テナントの火災保険の選び方・比較ポイント
テナントの火災保険の選び方・比較ポイントは以下の 3 つです。
- 貸主が求める保険内容を確認する
- 複数会社で見積もりをする
- 他社の見積もりを貸主に提示し交渉する
ここでは、火災保険の選び方・比較ポイントをご紹介します。
1.貸主が求める保険内容を確認する
不動産会社から提案される保険には、貸主の財産を補償する保険が用意されていますが、他
にも同等の内容をカバーする保険がないか探してみましょう。
貸主の財産がどの範囲まで、補償期間がいつまでなのかを把握すると良いでしょう。
2.複数会社で見積もりをする
テナント用保険を用意している複数社に見積もりを依頼しましょう。依頼する際は、自分の
希望する火災保険に加え、貸主側の火災保険の単独の見積もりも忘れずに。
見積もりをとることで、同等の補償で保険料が違うことを説得しやすくなります。
3.他社の見積もりを貸主に提示し交渉する
数社の見積もりが届いたら、見積もり書類を持参して貸主に提示し交渉しましょう。
また、どうしても『指定の保険会社でない NG』と言われた場合は、できるだけ自分の希望
の保険料に近づくように補償プランを下げてもらうのも良いです。
まとめ|テナントの火災保険に入る際は補償内容を必ず確認しましょう
テナントの火災保険に加入する義務は法律上ありませんが、火災保険の加入をおすすめしま
す。
また、火災保険は火災を起こしてしまった場合だけでなく、火災に巻き込まれてしまった場
合などにも補償を受けることができます。
そして、火災保険に入る際は、補償範囲や補償内容、火災保険の比較ポイントなどを確認す
るようにしましょう。