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テナントの原状回復とは?|概念から居抜き、費用、ガイドラインまで

2024.02.21


テナントの原状回復とは、賃貸契約終了時に、借りた物件を契約当初の状態に戻す工事のことです。
これは物件を賃貸借して開業する場合、必ず行う工事のため非常に重要な作業といえます。
そこで今回は、ガイドラインや費用・範囲なども含めて、網羅的にテナントの原状回復について解説
します。

テナント用と居住用物件の原状回復工事の違い

テナントの原状回復とは、賃貸契約終了時に、借りた物件を契約当初の状態に戻す工事のことを指し
ます。具体的には壁紙や床の修復・設備の修理などを行うことですが、テナント用と居住用で特性が
異なることがあります。

居住用物件

国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に沿って原状回復工事の内容が決まる。

国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」はこちら

テナント用物件

上記ガイドラインは居住用物件に対して定められたものなので、テナント用物件にはこのガイドラインは適用されず、基本的には賃貸借契約書の内容を基に費用負担、工事範囲などが決まる。

例えば、居住用物件では、一定の摩耗や変化が許容されることがありますが、テナント用では特約な
どで許容されず修復する必要が生ずることもあります。


次でそれぞれ詳しく解説していきます。

居住用物件の原状回復の特性

居住用物件の原状回復の特性は、「普通に住んでいればできる当然の汚れや損傷」が許容される点で
す。居住用の物件なので、通常の居住生活に伴う軽微な傷、使用による損耗は予想され、ある程度は
許容されます。
ただし、深刻な損傷や修繕が必要な場合は居住者に負担が発生することがあります。

テナント契約における原状回復の特性

テナント契約の特性は、契約終了時、通常摩耗の損傷や変更が許容されず入居時の状態に完全に復元
することが求められることが多いです。具体的には壁の穴埋め、床の修復、設備の元の状態への復旧
など、賃貸借契約書で明確に規定された修復作業を行なう必要があります。

通常、テナント契約では物件の定期的な保守と修繕は貸主の責任ですが、退去時の原状回復のみ借主
に責任が課せられます。原状回復工事については、費用も借主の 100%負担となることがほとんどの
ようです。

居住用物件とテナント用物件の原状回復の違いとその理由

居住用物件とテナント用物件の原状回復の違いは、使用目的や契約の性質に基づいています。

【物件使用目的の違い】
居住用物件:入居者が自身の生活のために物件を使用
テナント用物件:事業用途での利用のために物件を使用

【理由】

テナント用物件は事業用として使用するため、契約条件として物件を元の状態に戻すことが求められ
ます。そのため、テナントは厳格な原状回復が求められますが、居住用物件では通常の居住生活に伴
う軽微な傷、使用による損耗は予想されるため、状況によっては柔軟性があるという違いが存在しま
す。

居抜き物件の場合の原状回復

居抜き物件とは、以前のテナントが利用していた内装や設備、什器の全てまたは一部が残っていて、
そのまま使用できる状態の物件のことです。
特徴として、原状回復の範囲が契約条件や合意事項によって異なるという点があります。その際の注
意点として前のテナントが残した傷や変更を隈なく把握することが重要です。


次からそれぞれ詳しく解説します。

居抜き物件の原状回復の特徴と注意点

居抜き物件の原状回復の特徴は、前のテナントの内装や仕様を一部または全部、次のテナントが利用
する状態に変更する点です。次のテナントが物件を利用するためのカスタマイズや修復が必要な範囲
を契約で定め、変更や修復が行われます。
その際の注意点として、前のテナントが残した変更や傷の範囲を明確に把握することです。前のテナ
ントが残した変更や傷をどの程度受け入れるか、修復の責任が誰にあるかを明確化することで、スム
ーズな引き渡しが可能となります。

テナント物件の原状回復の特約とガイドライン

テナント物件の原状回復に関する特約は、契約書やリース契約の中で明示された条件や規定であり、原状回復のガイドラインは、あくまでも居住用を前提としたものになります。

テナント物件の原状回復の費用と範囲

テナント物件の原状回復の費用は、契約書やリース契約に基づいて定められ、入居時と退去時の物件
状態の差異に応じて決まります。基本的に契約書で定められた範囲が対象ですが、範囲外の費用はテ
ナントの負担になることがあります。
明確な契約条件に基づいて、原状回復費用と範囲を把握することが重要です。
次からそれぞれ詳しく解説します。

テナント物件の原状回復の費用相場と算出方法

原状回復工事の費用相場は、物件のタイプ、サイズ、状態、および契約条件によって異なりますが、
飲食店を例に挙げると一般的に約 20 万円から 50 万円ほどとなることが多いです。

算出方法としては、平方フィートあたりの費用や特定の修復作業の合計を算出することが一般的で、
具体的には壁や床の修復などの作業にかかる人件費、資材費などから算出されます。
物件の状態や修復範囲を評価し、業者の見積もりを比較して適切な費用を予測することが重要となり
ます。

美容室の原状回復工事の相場費用

美容室の原状回復工事の相場費用は、床や壁の修復、塗装など、使用状況や内装によって異なります
が、10 坪〜20 坪の規模感だと、一坪当たり約 5 万円から 10 万円ほどです。
特に美容室は、壁面の塗装やタイルの修復、床材の補修、設備の交換や修理、専用設備の取り外しが
含まれるので費用が加算される可能性があります。概算で計画する際には、内装の状態や必要な修復
範囲を評価することが重要です。

テナント物件の原状回復の範囲はどこまで?

テナント物件の原状回復の範囲は、契約書やリース契約で明確に定められており、重要なのは契約書
の条件を確認することです。
例えば、契約内容によって一部の標準的な摩耗や使用による劣化は許容される場合があるので、それ
を除いた範囲が原状回復工事の対象となります。
このように範囲を明確にするためにも、修復についての具体的な内容や範囲は契約書で明記しておき
ましょう。

費用と範囲を抑えるためのアプローチ

  1. 物件の原状回復の範囲を抑えるためには、入居時から物件のメンテナンスを定期的に行い、損傷や劣化を最小限に抑えること。
  2. 次に費用については、契約終了時に損傷や変更箇所を正確に把握し、修復に必要な作業を適切に実施すること。

以上 2 点を意識することで、費用と範囲を抑えるためのアプローチになります。

テナント物件の原状回復における判例

テナント物件の原状回復工事における判例とは、契約終了時の原状回復をする際に発生した問題から
裁判に発展した実例です。
判例を理解することで、テナントの原状回復工事を行う際の注意点がイメージしやすいと思うので参考にしてみてください。


主要な判例を2つほど紹介します。

判例①「賃貸借終了後の借主の原状回復義務(東京地判 2017 年 11 月 28 日)」

判例②「借主による原状回復義務の放棄(東京地裁 2011 年 6 月 9 日)」

判例①「賃貸借終了後の借主の原状回復義務(東京地判 2017 年 11 月 28
日)」

この判例は、貸主が賃貸借終了後に行った工事費用を原状回復義務として借主が負担すべきと問題に
なったものです。


以下、原文の通りとなります。

カフェを営んでいた借主の原状回復義務(東京地判平成29年11月28日)

判例②「借主による原状回復義務の放棄(東京地裁 2011 年 6 月 9 日)」

この判例は、結果的に借主の主張は無効と判断されました。
取引する際は契約内容を十分に理解した上で行うことが重要となります。


以下、原文の通りとなります。

ラーメン店を営んでいた借主の原状回復義務(東京地裁平成23年6月9日)

判例が示す原状回復の法的解釈とその影響

以上 2 点の判例から、原状回復は契約の内容が特に重要であり、借主は内容をしっかりと理解した上
で契約を結ぶようにしましょう。また、その後も借主と貸主双方が契約に基づく義務を認識し、契約
の内容を遵守することが重要となります。

まとめ|テナント物件の原状回復の理解と対応策

テナント物件の原状回復義務は契約書や法的要件に基づきます。借主は契約内容を十分に理解し、受
け入れた条件に基づき、契約を履行することが重要です。争いを避け、コストを削減するためにも契
約条件を遵守し、物件の定期的なメンテナンスを行なうことで損傷を最小限に抑えられるようにした
いですね。

以上のことを意識し、契約終了時のトラブル防止、円滑な取引の実現を目指すことが大切です。

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