「重飲食」と「軽飲食」の違いは、主に飲食業の「調理の度合い・業態」の事を指しています。
一般的に大多数は重飲食の業種となりますが飲食業種の区分けが、使う人間によって定義が微妙に異なり、実際のその言葉の使われ方も、人によって異なります。
1.「重飲食」ってなに?
重飲食とは、主に、大家さんや不動産会社が物件の入居可能業種等について話す際に、使う用語です。当然、対応する用語として、「軽飲食」というものもあります。
ここで言われている飲食の軽・重とは、主に飲食業の「調理の度合い・業態」の事をさしています。調理の度合いが、大きいのが「重飲食」、小さいのが「軽飲食」というわけです。基本的にこの言葉は、物件の業種制限と併せて用いられ、ほとんどの場合、重飲食業種よりも軽飲食業種の方が物件には入居しやすいです。つまり、募集されている物件の表現としては、重飲食でも入居できる物件は「重飲食可」、軽飲食までしか入居できない物件は「軽飲食可」となります。そのため、業種制限について問題になる(入居を制限される事がある)のは、「重飲食」業種で、その業種での出店希望者様はこのような事情を理解した上で、自分の運営する業種が入居できるかどうか、注意を払いながら、物件を探し、申込を入れる必要があります。また、後述しますが、飲食業全体で見た場合、一般に、大多数は重飲食の業種となります。
厄介なのはこの飲食業種の区分けが、使う人間によって定義が微妙に異なる、曖昧さを含んだ概念であるというところなのです。そのため、実際のその言葉の使われ方も、人によって異なります。以下に代表的な2つの重飲食の用法について記します。
① 広義の重飲食 ―2つに分ける場合―
重飲食
【概要】
厨房を備えて火を扱い、本格的な調理を行う飲食業種で、最も一般的な重飲食の解釈。軽飲食よりも、ガス、電気、給排気、のあらゆる点において、多くの設備容量を必要とする。
例)飲食業種の大半
軽飲食
【概要】
本格的な調理を伴わず、酒や珈琲などの飲物を主として提供することを目的とした飲食業種。食物については全く提供しないか、乾き物やサンドウィッチ等の軽食、温めるだけで提供できるものを取り扱う事が多い。
例)カフェ、バー、スナック
② 狭義の重飲食 -3つに分ける場合-
重飲食
【概要】
厨房を備えて火を扱い調理する飲食業種のうち、特に「油」や「匂い」、「煙」が多く出るもの。建物自体や周辺への影響が大きい事から、大家さんから入居を忌避されることが最も多い業種。
例)焼き鳥、焼肉、ラーメン、中華、カレー
飲食
【概要】
厨房を備えて火を扱い調理する飲食業種のうち、上記以外のもの
例)レストラン、居酒屋、ダイニングバー、和食店/バール(稀に軽飲食とも言われる)
軽飲食
【概要】
前述の通り
※上記区別は一例となります。解釈や判断は場合により異なります。
2.2つの例外:
上記のように、重飲食を取り巻く状況は中々面倒で、相手がどのような意味合いで重飲食という言葉を理解しているのか、都度確認していかないとなりません。さらに、厄介なのが、上記のような事情を理解した上でなお、その通りに行かない場合すらあるのです。下記にそのような事例を2つ載せておきます。
事例1:入居OK(重飲食不可の物件×ラーメン)
とある大家さんの場合・・・
「匂い・煙が出るのは嫌なので、重飲食はダメ」という物件はよくあるのですが、蓋を開けてみたら、ラーメン屋になっていた、なんて事もあります。
この場合、大家さんの募集開始時点の要望としては、調理を必要とする飲食業種の中でも、「油」「匂い」「煙」が、他の業種に比べて特に多そうな業態の焼肉、中華、焼き鳥、カレー、ラーメン等には入居して欲しくないというものでした。
※大体理由は下記の通りです
- 建物自体に悪影響が出る可能性が高いと考えるため
- 匂い、煙などの要素は、周辺住民のクレームになりやすいため
上記のように理由が明確な場合、「もしも大家さんが気にしている諸々の問題がクリアされていれば一般的に重飲食と言われている業種でもOKなのでは」と取ることもできます。しかし実際には、大家さんは、面倒な問い合わせを受けるのは嫌なので募集段階で、ラーメン等の重飲食業種をひとくくりに入居NGとして、設定してしまうことが多いのです。
では、どうしてラーメン屋が出店できたのか・・・
第一に、その出店者がセントラルキッチン方式を取って、店舗展開している方だったからです。調理のほとんどはセントラルキッチン等で、済ませておき、店舗まで運んでから少し加工・加熱して、すぐ顧客に提供するような形式で運営することで、ラーメン店でありながら、匂い・煙がかなり軽減する事が可能です。調理工程も少ないので、設備も最小で出店できます。第二に、その事を大家さんに伝えて、当初大家さんが抱えていたラーメン店等の入居に対する懸念を取り払ったことです。お客様が取るセントラルキッチン方式について、資料等を交えてわかりやすく丁寧に大家さんに説明し、ラーメン店等の「匂い・煙が強く、油が多い」という、固定イメージを覆し、ラーメン店であっても、この物件に入居するに当たってなんの問題もないのだ、という事をご理解いただきました。
このように、やり方さえ工夫すれば、一見ありえないような物件での出店へとつながる事がしばしばあるのです。
事例2:入居NG(重飲食可の物件×カフェ)
逆に「軽飲食」なので、入居OKという物件であった「あるある」です。
出店希望者の方はカフェ風ダイニング業態を希望していました。物件は重飲食でも可能だが、基本的には軽飲食の方が望ましい、という家主様の意向のもとで、募集されていた物件で、実際に様々な業種からの問い合わせがありました。そんな中、今回のお客様からの問い合わせがあり、大家さんとしても、「お店も綺麗そう」「油もそんなに使わないと言っているから、匂い・汚れもなそうだし」という理由で、そちらのカフェダイニング様と、前向きにお話を進めることとなりました。
しかし、ここからが重要です。なにかというと、設備容量の問題について、あまり考えていなかったのです。
(既にご理解をされている方・チェーン店企業の方・複数店舗を出店している方には、釈迦に説法ですが・・・)
こちらのカフェ風ダイニングは、チェーン店の企業様で、設備等の出店基準もかなり細かく決められていました。使用する調理器具、保存機器も多い上、普通のカフェよりも若干料理の度合いが高く、業務用エアコン等も規格が決まっていました。要するに、必要としている設備容量は、重飲食並だったのです。反面、今回の物件は、元々設備的に重飲食を想定して建てられておらず、備えている設備容量がかなり少ない物件だったのです。
物件には「火力→ガス」が家庭用レベルの容量しかありません。
その場合、コンロ2つと給湯器を設置したらガスの使用容量がいっぱい(!)
「電気」も家庭用容量で、冷蔵庫2つと室内灯と、家庭用エアコン2つ程度置いたら容量いっぱいいっぱい(汗‼)
「水道」も・・・。(以下略)
結果、思い描いていたお店が作れない(涙)
上記のように「設備容量」に起因するNGの場合は、そこから撒き返して出店するためのハードルはかなり高くなります。仮に設備容量の「増設」を大家さんにOKを頂いたとしても、初期投資がとんでもない金額になってしまう為、泣く泣く出店を断念するケースが殆どなのです。
今回の場合、大家さんは重・軽飲食について考える際に、調理の度合いによって生じる煙や匂いが多いか少ないか、という点にだけ、目を向けており、テナントさんの側は、元々重飲食可という事は重飲食にも対応可能なビル(=必要設備容量が多い)なのだろうという意識にとらわれ、双方、お話を進めてしまっていたところが落とし穴でした。飲食の軽重について考える際に、煙や匂い以外にも、「設備容量」という観点があったという事です。
(すべてではありませんが、)募集の際に打ち出される「重飲食可(あるいは軽飲食可)」は主に、個人に近い大家さんの場合「①調理の度合いに伴う煙や匂いの多寡」の意味合いによるものが多く、企業大家さん(ビル事業会社等)は「②設備容量の大小」という観点に基づくものである事が多いです。
3.まとめ
話を戻しますと、如何に「重飲食」という言葉が曖昧であるかという事と、使われる方の認識で大きく意味が違ってくるのです。
※逆の「軽飲食」も同様です
「飲食不可」「軽飲食のみ」といった表記があったとしても、例のように「聞いてみたら・・・」という事もあります。
「この物件でやってみたい」と思ったら、まずは不動産屋さんに相談してみる事をお勧め致します。