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申し込み判断基準と居抜き物件の3分類

2023.02.01


ここ数年、居抜き物件の慣習化に伴い、物件取得に関わる権利関係者や要素が増えた結果、物件をとりまく状況が少し複雑になってきています。物件引渡しの状態をベースに「居抜き物件の3分類」について解説していきます。

1.基本的な店舗仲介

申込判断者

貸主(物件所有者)

主な判断基準

賃貸条件賃貸条件の良し悪しで判断する場合(満額条件か、交渉条件か)
業種内容貸主の趣向や近隣入居者との兼ね合いを鑑みて営業業種内容から判断する場合
入居与信継続して入居し、家賃を支払い続ける事が出来るかどうか、テナントの信用力をみて判断する場合。
※最近では保証会社の利用等により緩和されている事が多くあります。

上記判断基準のいずれか、もしくは複合によって、貸主は入居希望者からの申込を審査します。

Tips:人気物件
人気のある物件で、申込が複数重なった場合には上記3点を踏まえた総合判断が基本となり、超人気物件になれば募集条件を上回った条件で取引される事もあります。

Tips:申込時の主な審査の方法

  • 先着順
    もっとも一般的な方式です。申込が入ったら、先着したものから順次審査へと移っていき、審査に通ればその時点で入居者が決定します。いわゆる早い者勝ちです。仮にですが、時期的にそれほど違いのない複数の申込が入ったとしても、内容に大差がなくいずれも要件を満たしていれば、この原則を覆すことはあまりありません。
  • 選定
    応募期間を設けて、複数の申込が入ってから、その内容をそれぞれ同時に審査して選定するケースです。このような進め方は、人気の集まりやすい物件に多く見られます。募集の開始時期が早く、貸主に判断する時間の余裕があり、入居者を吟味したいと考えた場合や、貸主が法人で、その社内的な調整のため、判断に時間がかかる場合に、この方式を取ります。

昨今は建物自体の売買が活発化し、貸主が法人となっている事が多く、選定による申込の審査方法が増える傾向にあります。

※一般的な、各ケースにおける当事者同士の関係性を表したものです。
※多くの場合、貸主には物件の管理会社、出店希望者には仲介会社等の不動産会社がそれぞれ間に入って相談・交渉しています。

まだまだ細かい点は幾つかありますが、物件を検討や申込をする際の大枠の状況になりますので基準として認識頂ければと思います。

2.居抜き物件の場合

ここ数年、居抜きという引渡方法がすっかり一般化してきました。ただ、居抜き物件の慣習化に伴い、物件取得に関わる権利関係者や要素が増えた結果、物件をとりまく状況が少し複雑になってきています。そこで、簡単ではありますが、物件引渡しの状態をベースに利害(権利)関係者について、取り纏めさせて頂きたいと思います。

引渡状態

賃貸借契約には必ず原状回復義務が付いている為、原則として、原状回復された状態(多くはスケルトン)で引き渡される事となります。原状回復の意味はコチラ

居抜き物件の三分類

【パターン1】居抜き物件(造作譲渡代金有り)

解約申し入れ後、前入居者の契約期間が残っており、貸主が居抜きを容認している場合、現入居者から次入居者への造作譲渡による居抜きでの引き渡しが可能となります。その際、造作に対して代金が発生する事があります。また、この時点での造作の所有権は現入居者にあります。

一般的な、退去(契約の解約)を前提にした、居抜き物件の進捗の流れは以下のようなものです。
まず、退去日までに造作所有者と入居希望テナントの間で造作売買が成立する事を目指して募集がすすめられます。その後、もし退去日までに後継者が見つからず、造作譲渡で引き渡せる目処が立たなかった場合には、貸主の判断に基づき、状況は次の段階に進みます。それは原状回復するか(スケルトン物件化)、現入居者が造作の所有権を放棄して、そのまま退去する(パターン2)かのどちらかです。

Tip’s:貸主が居抜きを認める背景
先に述べたとおり、本来であれば、物件の引渡は、居抜きではなく原状回復しての引渡が原則となります。ゆえに、造作の売買に関して、貸主としては現入居者の意向をそれほど汲む義務はありません。このような事が慣習化されている事情の大部分は、貸主の入居者に対する純粋な善意によるものです。ただ、貸主としても居抜きを認めるメリットがないわけではありません。造作が残っている状態の方が次の入居者にとっても低コストで出店が出来、引継ぐメリットがある為、物件としても後継者が、決まり易いで在ろう(募集にあたって、物件の価値が高くなる)という貸主の意向のもと居抜き物件として募集している場合もあります。また、造作譲渡さえまとまれば、居抜きの方が契約から引渡しまでが早く、スムーズに進みますので、それを歓迎する貸主もいます。※2

反面、スケルトンでの引渡を希望する出店希望者にとっては、このように居抜き物件として募集されている物件の場合、現入居者の契約期間の満了や引渡方法が変更となるのを待たなくてはならず、入居に対するハードルが上がることとなります。

※一般的な、各ケースにおける当事者同士の関係性を表したものです。
※多くの場合、貸主には物件の管理会社、出店希望者には仲介会社等の不動産会社がそれぞれ間に入って相談・交渉しています。

【パターン2】居抜き物件(造作残置)

引渡しの際に、前入居者が使用していた造作物の所有権を放棄し、退去後も店舗物件内に造作がまだ残っている状態を俗に造作残置と呼びます。この場合、基本的に造作の所有権は貸主に移っていますが、その造作の内容は、パターン1や3(後述)程には、充実していない場合が多いです。もともとの所有者が退去の際に、厨房機器を個別に売却したり、引き上げていたりすることが多いからです。貸主もそれら造作に値段をつけず、次入居者には無償で譲渡するケースがほとんどです。グリストラップ、防水、ダクト等は残っている事が多いので、スケルトン状態から工事をするよりは投資を抑える事ができます。

造作を残した状態の物件が、貸主にとって好都合となるケースについては、先に述べたとおりですが、居抜きでの入居を希望するテナントが見つかった場合、双方にとってメリットがある状態と言えます。

Case:入居希望者がスケルトン渡しを希望した
しかし、入居希望者が前入居者の残した造作を必要とせず、スケルトン渡しを希望した場合、スケルトン工事の費用をどちらが持つかが問題となります。ここで、案件を進めるにあたり利害となりうる要素が一つ増えることになります。このような利害は、複数申込が入った際に、特に問題となります。
たとえば、

  • テナントA:造作を使用可能で、残置が希望にかなう入居希望者
  • テナントB:引渡状態にこだわらない入居希望者
    (造作が必要なかったとしても、自分で撤去、解体工事するのを厭わない希望者)
  • テナントC:スケルトン渡しを希望する入居希望者

仮にABC三者が申込を入れている物件があるとした場合、ABに比べCは、かなり不利と言わざるを得ません。Cが原状回復の費用を貸主負担で行う事を希望した場合、貸主は費用負担のないABを優先します。もし仮にそれを避け、CがABと並ぶ為には、残置された不要な造作を解体する前提で検討しなければならず、元がスケルトンの物件に入居する場合と比べ、余計な費用がかかってしまうことになるからです。

※一般的な、各ケースにおける当事者同士の関係性を表したものです。
※多くの場合、貸主には物件の管理会社、出店希望者には仲介会社等の不動産会社がそれぞれ間に入って相談・交渉しています。

【パターン3】居抜き物件(造作譲渡代金成立が前提)

パターン1,2と大きく違う点は、貸主に対し解約の通知を出していない状況であり、居抜きサイトなどを介して、造作の買取りを「前提」として募集される点になります。所謂、「売れたらやめる」という状態での募集であり、利害関係者として現入居者がかなり裁量を持っており、第一段階で、現入居者と入居希望者の間で造作譲渡代金の合意が必要となります。その後、貸主(もしくは物件管理会社)に対し、契約切替えの申立てを行うという順序になり、そこで判断の主体が貸主に移ります。このような物件は、通常の物件よりも、成約までの道のりが険しくなる場合が多いです。判断プロセスが2段階あるため、時間がかってしまう事と、仮に第1段階で造作代金が合意に至った場合でも、次の段階で貸主の承諾が取れるか否かは別問題であるからです。しかし、造作の売却を前提とした物件の情報は、総じて希少なものが多いため、時間は掛かりますが諸々の困難を乗り越えて成約に至る例が多いのも事実です。

※一般的な、各ケースにおける当事者同士の関係性を表したものです。
※多くの場合、貸主には物件の管理会社、出店希望者には仲介会社等の不動産会社がそれぞれ間に入って相談・交渉しています。

3.まとめ

様々な募集の形が増えた昨今、出店を検討する企業、個人様にとっては物件を取得する際の状況が複雑になってきています。何れにしても居抜きという状態での物件募集が増えているのは事実で、造作譲渡代金が発生するケースも多いです。そのような状況下で良い物件を取得する為には、取得にかかるコストが単純に高いか安いかだけの判断ではなく、検討している居抜き物件をとりまく状況を理解し、事業採算が合うか否かの総合的な判断を素早く的確に出すことが必要とされます。