事業計画書

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前回のコラムで「申込の判断基準と居抜き物件の3分類」を説明させて頂きましたが、今回はさらに一歩踏み込んで物件の取得のために大きなポイントとなる、「申し込みに
あたっての事業計画書作成」について、仲介をする不動産会社としての視点で説明します。

事業計画書の役割

「事業計画書」、色々なところで耳にする単語かと思いますが、これを作成することは非常に重要かつ有益です。融資等お金を借りる時はもちろん必要ですし、事業計画書作成は、自分の頭にあるイメージを具体的な数字へと具現化していく作業なので、自分のやろうとしている事業に関して、新たな発見や修正点などが見えてくる、という効果もあります。そして本コラムの肝である「物件の取得」においても、大いに役立ちます。事業計画書の主とした役割として、先ほど述べたように金融機関から店舗開業資金の融資を得るためというのは想像がつくかと思いますが、それ以外に「貸主(大家)さんにどのような店舗が自分の持つ建物に入るかを伝える」という役割もあり、その事が、希望した物件に入居する、という目的を果たすために非常に有効に働きます。

★☆金融機関に提出する事業計画書雛形:日本政策金融公庫★☆

印象を残す

皆さんが入居したいと思う物件はどのような物件でしょうか?多くは「立地が良い、立地の割に賃料が安い、初期投資が抑えられる(居抜きの物件である)」というような特性を持った物件だと思います。しかし、皆さんが「いいなぁ!」と思う物件は、他の出店を検討している人々からしてみても「いいなぁ!」という物件なのです。そのため、申込というのはしばしば他社と競合しますし、優良物件ともなれば、申込が殺到し数十に及ぶこともあります。(そうなった時に家主さんがどのような基準で選ぶかは、前回のコラムにありますので詳細は割愛します。)仮に、申込が2、3件程度であれば、選定の際に貸主(大家)さんが申込を入れている全員と面談して、どのような人柄か、どんな事業をするのか個別に話を聞いて判断することは可能です。ただ、例えば申込が10件以上になれば全員と面談することなど、まずありません。言わずもがなですが、面談だけで相当な時間がかかってしまうからです。そのため、事前段階として、書類審査が行われ、候補を絞るという作業を行います。もちろん仲介会社である我々も、「申込を入れたお客様はこんなに魅力的な業態です」、と貸主(大家)さんに対して最大限アピールはしますが、10社以上の申込があると、貸主(大家)さんの方も、全ての印象を覚えておくことは出来ないので、「あれ?〇〇さんの言っていた申込者はどの人だったかな?」ということになる可能性が大です。こういう時事前に企画書を提出しておければ、お客様やそれを仲介する私に代わって、企画書が貸主(大家)さんに説明(プレゼン)をしてくれます。貸主(大家)さんは申込書と一緒に提出された企画書を見ながら「なるほど。こんな内外装で、こんな感じの料理が出るので、こんな感じのお客さん達が私の所有する建物にやって来るんだなぁ」という風に具体的にイメージが出来ます。さらには「こんなに丁寧にしっかりとした資料を作る人なので、申込者の方はキッチリとした性格の方なのだなぁ。」というポジティブな受け取り方をされる事もあります。そして、貸主(大家さん)に「この人と一度会ってお話をしてみたいなぁ」と思わせれば、申込は次の段階に進み、希望する物件への入居に大きく近づきます。

★☆貸主(大家さん)に提出する事業計画書(例)★☆

ビジュアル重視の事業計画書

それではどのような事業計画書を申込時に貸主(大家)さんに対して提出すれば良いのでしょうか?ここで押さえておくべきポイントは金融機関に提出すべきものと、貸主(大家)さんに提出すべきものとは作成方法が異なるというところです。端的に言うと「金融機関に提出する数字や文字中心のものではなく、写真や絵を多用したヴィジュアル重視の事業計画書の方が貸主(大家)には響く!」ということです。金融機関に提出する事業計画書は「どのような事業を、どのような計画の基に運営し、どのように貸出したお金を返済しようとしているか」ということが伝わるように作成して、提出しないと融資はおりません。そのため、どうしても文章や数字を主とした事業計画書になってしまいます。一方で、貸主(大家)さんが申込を受けた際に、その判断材料とするのは、論理的な説明というよりは主にイメージや印象の部分です。従って貸主(大家)さんに提出する事業計画書は運営する店舗のイメージを伝える事が重要となりますので、「どのような業態を、どのような内外装で、どのような料理で、どのような価格帯で、どのように運営をするか」という視点で、わかりやすく写真や絵を中心としたものを、作成するべきです。金融機関と貸主(大家)さんで、知りたい・重要視するポイントは異なるのです。
(金融機関は資料を読込み内容を精査することが仕事ですが、貸主(大家)さんはあくまで参考資料として受領しますので、必ずしもそれを読み込んでもらえるは、とは言えないですが。。。)
ヴィジュアル重視の資料を、と書いた理由について補足をすると、貸主(大家)さんの多くはご年配の方です。ご年配の方なので、細かい数字だったり、文章だったりを仔細に渡って目を通すこと、はかなりの労力を要します。例えば「赤を基調とし、木などの自然素材をあしらって現代的なデザインでありながら温もりのある店内」という文章による内装説明よりも、そのイメージに近しい内装写真をインターネットなどで探して、「内装イメージ写真」として資料内に表示した方が具体的かつ的確に伝わります。外観や料理なども出来るだけイメージ画像で伝えた方が良いでしょう。文章であれば流し読みをされると記憶には残りにくいですが、画像であれば流し見した場合でも、印象が残り、相手に伝わりやすくなるからです。

2つの事例

ここまで熱く事業計画書の大切さを述べてきましたが、なぜかと言うと、事業計画書がしっかりしている方は希望する、物件の取得が出来、その後の事業継続・拡大についても上手くいっている事が多いからです。具体的な事例を2つ挙げます。

しずる感のある焼肉店

焼肉業態は匂いや煙が強いので、貸主(大家)から業態NGが出やすい上、設備投資が重たいことも相まって店舗展開が難しい業種の一つです。その焼肉業界で破竹の勢いで出店している企業様がいました。私もハタから見ていて、あの企業は焼肉業種なのによく物件をとれているなぁ、と常々感心していたところ、縁あって、当のその会社様より、弊社が募集している物件にお申込みを頂きました。その際に業態資料を一緒に頂いたことで、先ほどの謎が解けました。ここでお見せできないのが残念なのですが、それは、ヴィジュアル重視の資料で、綺麗な内装、落着いた外観、シズル感のあるお肉や料理等々、がありありと伝わってくるようなものでした。この資料からイメージされる店舗からは、焼肉店特有の匂いや煙を出すというネガティブな印象は受けません。むしろその資料は、物件の所有者であればテナントとして入れたい、と思うようなお洒落な店舗となる事を予感させるものでした。資料一つで他の焼肉と、こうも差別化できるものだなぁ、と強く感じました。

ブレないビストロ

もちろん、ヴィジュアルで貸主(大家)さんに訴えるだけが事業計画書の役割ではありません。事業計画書には事業者が出店を進めていくに当たって、自分の店舗のコンセプトをしっかりと固め、確認し、ブレないためのもの、という側面もあります。もう一つの事例は、とあるビストロです。こちらのお客様が第1号店を探している際に、申込書と一緒に事業計画書を頂きました。それは、コンセプト、内装イメージ、料理写真、など非常に充実していてとても分かりやすいものでした。残念ながら、その時に入居を希望していた居抜き物件の取得は出来ませんでしたが、ほどなく1号店を居抜きで取得し、今では複数店舗を運営されていると聞いております。事業計画書を読んだ際に一番私の目を引いたのは、コンセプトとして、料理とドリンクとサービスの質を一番に置くと謳っていた点でした。実際にはお客様の出店戦略はこの点を活かす事から始まり、ブレる事がありませんでした。物件の探し方もその例の一つです。私がお客様と一緒に、物件を探していた際に伺った要望としては、多少立地が悪くても駅から近く賃料の安い物件であれば、目立たなくても(看板等出せなくても)構わないし、(視認性の良い)路面にも拘らないというものでした。その理由は、(立地は良いが賃料の高い物件を避けることで)継続してかかる費用(賃料)を抑え、その分料理やサービスの質を高めれば、立地が悪くとも、来店してもらったお客様からリピートや口コミが広がり、集客が可能であるという考えをお持ちだったからです。店舗をお探しの方は、どうしてもすべての条件を満たす物件を追い求めてしまうものですが、理想的な物件を取得するというのはなかなかできることではありません。なにかしらの点で、妥協しないといけないものです。このビストロさんの場合は初出店の段階から事業計画書を作成することで、なにに重きをおき、なにを妥協するべきか明確化していたのが、早期に1号店を取得できた要因であり、その後も事業拡大できた理由の一つかと私は思います。これを読んで頂いた皆様も、相当な時間はかかりますが、事業計画書を作成し、自らの描く事業を再度構築して頂ければ幸いです。

まとめ

・物件探しの前に(もしくは平行して)事業計画書を作成しよう!
・事業計画書は「金融機関向け」と「貸主(大家)さん向け」の2種類を作成しよう!
・「貸主(大家)さん向け事業計画書は写真や画像を中心としたヴィジュアル重視の資料にしよう!
・他人に自らの想いを伝えるには、資料化しないとなかなか伝わらない!
面倒でも事業計画書を作成しないと物件はなかなか取得できないし、なにより事業成功の第一歩である!

※補足:貸主(大家)さんが事業計画書上の数値をあまり気にしない、という書き方をしていますが、全ての貸主(大家)が気にしていない訳ではありません。ただ、店舗では「もしも」の時の担保として、住宅より多くの保証金を預けますし、連帯保証人の捺印、賃料保証会社への加入など、貸主(大家)さんは様々リスクヘッジを行っており、その条件をある程度満たせる方であれば、与信面をそこまで気にする必要がないため、出店者の内容(業態)を重視して選定を行う事が多いということです。もしも、貸主(大家)から具体的な数値等を求められるようであれば金融機関に提出した資料を提出しましょう。もしくは資料を予め別々にしておくなどの工夫を行いましょう。

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