テナント契約時に交付される契約書に「契約更新料」が含まれている場合がありますが、更新料とはどのようなものなのか、考えたことはありませんか?
この記事では、テナントの更新料とは何か、支払義務はあるのかをはじめ、更新料の相場、更新料には消費税がかかるのか、更新料の注意点、賃貸契約における更新方法の違いについて解説します。
テナントの更新料とは?支払い義務はあるのか?
テナントの更新料とは、契約期間満了時に契約更新して引き続き物件を使用するために借主が貸主に支払う費用のことです。
オフィスや店舗の一般的な契約期間は2〜3年ですが、継続して物件を使用する場合は契約期間満了時に契約更新と更新料の支払いが必要となります。
しかし、テナント用物件の更新料は貸主側が独自に設定する費用のため、必ずしも支払い義務が発生するわけではありません。
契約内容に「更新料が含まれる」旨の記載がある場合は、契約更新時に更新料の支払いが必要です。
賃貸契約を結ぶ際には、更新料の有無について記載がないか必ず契約書を読みましょう。
更新料の相場
テナント用物件の更新料の相場は、賃料1ヶ月分相当が一般的な目安とされていますが、あくまで貸主が金額設定をする場合が多くなりますので実際の更新料は、記載された契約書をよく確認することが大切です。
具体的な金額の例は以下の通りです。
・賃料10万円の物件で更新料が賃料1ヶ月分の場合は、更新料10万円
・賃料20万円の物件で更新料が賃料1ヶ月分の場合は、更新料20万円
以上の更新料を支払うことになります。
更新料の減額交渉はできる!?
原則として、テナント更新料の減額交渉をすることは問題ありませんが、成功するかは貸主の対応に委ねられます。
更新料の減額交渉をする際は、「なぜ減額交渉するのか」の理由を明確化しましょう。
・長期間テナントを借りている場合は、貸主にとって信頼できるためその点をアピールする
・他のテナントに移転を検討している場合は、「他の物件も検討している」旨を伝える
以上の2点を念頭に置くことで、条件を緩和する可能性があります。
なお、賃貸借契約書に「賃料の減額はできない」といった特約が記載されていた場合は更新料の減額はできないため注意が必要です。
更新料に消費税はかかる?
事業を行うためにテナントを借りることは「サービスや役務の提供」にあたり、その対価として支払うテナントの賃料や更新料には消費税がかかります。
更新料20万円に消費税率10%を加算した場合は、
例:更新料20万円×消費税率10%=22万円
となります。
更新料の勘定科目とは
テナント更新料は、賃貸借契約の更新に伴って支払う手数料です。
事業のために支払った更新料は、法人税法上の繰延資産である「建物(所得税法上は資産)を賃借するために支出する権利金等」に区分されるため、経費計上ができます。
また、事務所兼自宅、店舗兼自宅として借りている物件なら、按分(あんぶん)により事務所や店舗分のみを経費計上することが可能です。
更新料を経費計上する場合、「支払手数料」や「前払費用」の勘定科目を使って仕訳します。
更新料が20万円未満の場合は、少額全額繰延資産の特例制度を利用して、一度に必要経費とできるため、「支払手数料」の勘定科目で仕訳します。
更新料が20万円以上の場合は、期間に応じて按分処理が必要になります。
按分処理する際は、決算から1年以内に費用化される分は「短期前払費用」、1年超となる場合は「長期前払費用」の勘定科目で仕訳します。
更新料の注意点
更新料の注意点については以下の通りです。
・事前申請しない場合、自動更新される
・契約書の確認
以下で詳しく解説します。
事前申請しない場合、自動更新される
一般的には契約満了の数ヶ月前に貸主または管理会社から契約更新するか否かの意思確認のための通知が届きます。
テナントの契約更新を希望しない場合、契約書に記載された通知期間内に更新拒否の意思を伝える必要があります。事前申請を怠ると契約が自動更新され、テナント賃料を支払う義務が発生するため注意しましょう。
貸主または管理会社側から契約更新しない旨を通知することは可能ですが、その際は正当な事由が必要となります。
具体的な手続きについては、契約書に記載されている内容や貸主または管理会社の指示に従って行うようにしましょう。
契約書の確認
テナント賃料が値上がりする場合は、更新料も値上がりします。
これは、更新料が契約時の賃料に基づいて計算されるために生じるものです。
例えば、更新料が賃料の1ヶ月分となっている場合、賃料が値上がりすると更新料も同様に値上がりします。
賃料の値上げに伴い更新料も値上がりするとは言えど、値上げの旨を通告するタイミングは貸主や管理会社の判断に委ねられています。
そのため、更新料に関する記載がないか賃貸借契約書を確認するようにしましょう。
普通借家・定期借家における更新方法の違い
テナントの賃貸契約には必ず契約期間が定められており、オフィスや店舗では2〜3年の契約期間となっていることが一般的です。
普通借家契約・定期借家契約のどちらの賃貸契約を交わしているかによって更新方法が異なるため注意が必要です。
普通借家の更新方法
普通借家契約は、借主と貸主の長期にわたる関係を想定した契約形態です。
この契約では、正当な事由がない限り、原則として貸主側による契約更新の拒否ができず、特別な事情がない限り、更新が義務付けられています。
普通借家契約は以下の3つのパターンで契約更新をします。
・法定更新
・合意更新
・自動更新
普通借家契約を交わしている方は、どのような更新方法をとられているか一度契約書を確認しましょう。
法定更新
法定更新は、賃貸契約において借主の安定性を保護する一方で、貸主には適切な物件管理と契約運用の責任を課す制度のことを指します。
この更新方法では、借主が契約更新を希望する場合、特別な理由・事情がない限り貸主は更新を拒否することはできません。
「正当な事由」とは、以下のような契約を継続することが不適切と判断される事態を指します。
・借主が長期にわたり賃料を滞納している
・テナント物件を故意に損傷させる行為
・近隣住民や他の借主とトラブルがある
貸主が契約更新を拒否する場合は、正当な事由を明示し、必要に応じて法的根拠を提供する必要があります。
合意更新
合意更新は、貸主と借主双方の合意により契約期間を更新する方法です。
この更新方法では、契約期間の終了に近づいた時点で、契約内容に変更がある場合は、双方が新たな契約条件について話し合い、合意する必要があります。
合意更新では、
・賃料
・契約期間
・契約条件
など、契約のあらゆる面について再交渉することが可能です。
自動更新
自動更新は、契約満了時に貸主または借主のどちらかの申し出がない限り、契約が自動的に更新される更新方法です。
これは、契約が特定の期間で終了することを前提としないため、特に新たな契約交渉や合意がなくても契約が継続されることを意味します。
この更新方法は、契約の見直しや更新手続きの手間を省けますが、時代にそぐわない契約内容になるリスクも伴うため注意が必要です。
定期借家は更新がない
定期借家契約は、契約更新という概念がないため、契約期間が終了すると自動的に契約終了となります。
継続してテナントを借りる場合は、再度契約を結ぶ必要があるため注意しましょう。
この契約形態は、以下のようなケースで適用されることが多いです。
・ビルの建て替えが決定しており、それまでの期間に賃貸契約する
・トラブルを避けるために、更新しない前提で賃貸契約をする
定期借家契約は、契約更新がない代わりに「再契約」を交わすことが可能で、再契約する場合は、「再契約料」という形で費用がかかることが多いです。
再契約を選択しない場合はテナントから退去する必要がありますが、契約書に「原状回復義務が発生する」旨の記載がある場合は、建て替えするビルであっても元に戻して返却しなければいけないため注意が必要です。
まとめ|更新料を把握しましょう
テナントの更新料は慣習的なもののため必ずしも支払義務が発生するわけではありませんが、契約書に「テナントの更新料の支払いが発生する」旨の記載がある場合は更新料の支払いが必要です。
更新料の相場は賃料1ヶ月分程度で貸主と借主の合意に基づいて任意で設定されますが、賃料が値上がりする場合は更新料も一緒に値上がりする場合があるため、更新料に関する記載がないか契約書を確認することをおすすめします。