店舗の開業やテナントの移転、入れ替えによるリニューアルなどで必要となる電気工事ですが、電気工事とはどんな工事かご存知でしょうか?
この記事では、テナントの電気工事はどんな施工内容なのかをはじめ、電気工事の費用や相場から電気工事の耐用年数、電気工事の際に注意することについてご紹介します。
今回ご紹介する電気工事は、「テナント」での電気工事となり、居住用の工事ではないためご注意下さい。
テナントの電気工事とは?
電気工事とは、テナント内へ電力を供給して電化製品(パソコン、プリンター、エアコン)や通信設備などを使用可能な状態にする工事のことを指します。
電気工事の種類は以下の通りです。
・業務用電源の設置
・ネットワーク回線
・コンセントの増設
・照明器具の取り付け
テナント内に電気工事を行うことで、接客や製造、調理などの業務の効率化や長期的なコスト削減ができるというメリットがある一方、電気工事を行うには高額な工事費用が発生し、数日から数週間にわたる休業が必要になる場合があるため注意しましょう。
電気工事の費用は?
テナントの電気工事において発生する費用の内訳は6つの項目に分けられます。
①デザインや施工監理、交通費などの諸経費用
②分電盤や電気配線などの業務用電源設置費用
③コンセントやスイッチの設置費用
④インターホンの設置費用
⑤電話回線と設備の設置費用
⑥インターネット回線と設備の設置費用
電気工事の費用は施工する設備の種類と数量に応じて変動します。
居抜き物件に設置されている設備の交換や修繕を行う場合は、別途撤去や解体費用も発生するため注意しましょう。
電気工事の相場
テナントの電気工事にかかる費用相場は、業種や規模にもよりますが、坪単価1万円〜5万円程度です。
特に飲食店や美容院など、業務用機械による電力の使用量が多い業種は、業務に使う電力が建物自体の電気容量を超えてしまうことがあります。
その場合、電気設備全体の刷新が必要になる可能性があります。
全ての電気系統を交換するとなると、通常の電気工事よりも高額な費用が発生することがあるため注意しましょう。
電気工事の費用を抑えるコツ
テナントの電気工事の費用を抑えるコツは以下の4つです。
①複数の業者に相見積もりを取る
複数の業者に相見積もりを取ることで、電気工事の施工内容や工事費用を比較・検討することが可能です。
同じ工事内容を提示された場合は、安い見積もりを提案できる業者を選びましょう。
②複数の工事をワンストップで対応できる業者を選ぶ
複数の工事をワンストップで対応できる業者を選ぶことで、工事の手数料や相談の手間を削減できます。
さらに内装や空調・照明などの設備の工事も依頼することで、工事費用の削減を実現することが可能です。
③居抜き物件を活用する
居抜き物件を活用することで、前の借主が施工した電気設備を引き継げ、工事費用を抑えることができます。
ただし、居抜き物件はコンクリート打ちっぱなしのスケルトン物件よりも工事の自由度が低くなる点には注意が必要です。
④自治体の補助金・助成金を申請する
自治体の補助金・助成金を申請することで、工事資金を得ることが可能です。
自治体が実施している補助金・助成金制度は主に5つあります。
・ものづくり補助金
・事業再構築補助金
・IT導入補助金
・事業承継・引継ぎ補助金
・受動喫煙防止対策助成金
自治体によって実施している補助金・助成金制度が異なるため、自治体のwebサイトを確認することをおすすめします。
電気工事の耐用年数
テナントの電気工事の耐用年数は、「蓄電池電源設備」と「その他のもの」の勘定科目によって異なります。
「蓄電池電源設備」とは、停電時に照明用に使用するために蓄電池を充電し、蓄電した電池を利用するための設備のことです。
例:非常用照明の点灯など「防災用蓄電池」
「その他のもの」は、建物の電気設備で「蓄電池電源設備」以外のものが該当します。
例:照明器具、ネットワーク回線、ブレーカー、配線工事など
蓄電池電源設備の場合は耐用年数が6年、蓄電池電源設備以外の場合は耐用年数が15年と定められています。
電気工事の流れ
テナントの電気工事は以下の手順で行います。
①工事を施工する目的と予算を決める
テナントの電気工事を行う際は、工事の目的と予算を決める手順から始めましょう。
現在抱えている課題を洗い出すことで、工事の目的が明確になります。
また、予算内で優先的に工事する内容を決めるためにも電気工事の予算を立てておきましょう。
②工事業者を選定する
工事の目的と予算が決定したら、工事業者を選定する手順に入ります。
業者によって対応できる電気工事の内容が異なるため、公式HPや口コミなどで情報収集を行いましょう。
情報収集する際は、「第一種電気工事士や第二種電気工事士の有資格者が在籍しているか」「損害賠償保険に加入しているか」「アフターフォローやメンテナンス内容が充実しているか」を特に重視して確認しましょう。
③工事を依頼する
選定した工事業者と契約を交わして、工事の依頼をしましょう。
契約を交わす前に、電気工事の目的と予算などの希望条件を伝え、施工するテナントを下見してもらった後に見積もりを出してもらいましょう。
提示された見積もりに基づいて、工事の日程や内容について確認・相談します。
工事を依頼した際に後悔のないよう、納得できる条件に調整したうえで、工事を依頼しましょう。
④工事の進捗状況を確認する
契約した日程で工事が開始されたら、工事の進捗状況を確認しましょう。
工事後に依頼主と工事業者による立ち会い検査が行われますが、問題を早期発見することで、素早く改修や工事内容の変更等を判断することが可能です。
そのため、工事業者に任せきりにせずに、密にやり取りをしながら、電気工事を進めましょう。
⑤立ち会い検査とテナントの引き渡しを行う
テナントの電気工事が完了したら、立ち会い検査とテナントの引き渡しが行われます。
「増設した電気設備に不具合はないか」「ネットワーク回線の速度は正常か」など、依頼した工事に不備がないかを確認しましょう。
仮に工事内容に不備が見つかった場合は、改修工事を相談しなければなりません。
テナントの引き渡し後の改修工事には有償での対応となる場合があるため注意が必要です。
また、特別な操作が必要な電気設備やネットワーク回線設備については、操作方法のレクチャーを受けましょう。
⑥定期的にメンテナンスをする
テナントの電気工事の引き渡し後には、電気を使用した際の事故や故障等での営業損益を抑えるためにも、定期的なメンテナンスを行いましょう。
また、電気設備に気になる点があれば、不具合のある設備・機器の使用を中止し、従業員と顧客の安全を第一に考え、すぐに工事業者に連絡をしましょう。
テナントの電気工事する上での注意点
電気工事をする上での注意点は、事前に準備をして必要な電気工事を行うことです。
以下の通りです。
・注意点1:工事区分の確認
・注意点2:工事のスケジュール調整
・注意点3:コンセント・電化製品・通信設備などの設置場所の確認
・注意点4:店内のデザイン性
以下で詳しく解説します。
注意点1:工事区分の確認
テナントにはA・B・Cの3つの工事区分があり、工事区分によって工事の発注や業者選定に関わる人が変わります。
電気配線工事などは、工事区分により貸主・借主で費用負担が変わるケースがあるため、電気工事業者に依頼する前に確認しておきましょう。
注意点2:工事のスケジュール調整
電気工事を行う際は、業務への影響を最小限に抑えるために工事のスケジュール調整が非常に重要になります。
テナント営業中に工事を行う場合、電気の送電停止や騒音が発生することがあり、業務時間外や定休日を利用して工事を進めるなど、業務に支障が出ないような配慮が必要です。
また、予期せぬトラブルへの対応として予備日を設けることも考慮してスケジュール調整を行うようにしましょう。
注意点3:コンセント・電化製品・通信設備などの設置場所の確認
テナントの電気工事を行う際には、コンセント・電化製品・通信設備などの設置場所を確認することが非常に重要です。
コンセント・電化製品・通信設備などの設置場所が不適切だと、機器の使用や店内のレイアウトに支障をきたし、業務効率が低下する可能性があります。
そのため、テナントのレイアウトや使用する機器の配置を事前に確認し、最適な場所に設置するようにしましょう。
また、将来的に機器の増設やレイアウト変更の可能性が見込まれる場合、それに対応できるように設置場所を確認することをおすすめします。
特に通信設備については、配線やネットワーク機器の追加がしやすいレイアウトにしておくと良いでしょう。
注意点4:店内のデザイン性
テナントの電気工事を行う際は、デザイン性を意識して空間の魅力を高めて、店内の雰囲気やブランドイメージを向上させるために店内のデザイン性を考慮することが重要です。
店内のデザインに合わせた電気工事は、作業動線に沿ったコンセントの配置や、適切な照明の配置で作業効率が上がり、業務の質が向上するなど従業員が働きやすい環境づくりにも影響を及ぼします。
店内のデザイン性を考慮した電気工事を行うことで、結果的に集客力や顧客満足度の向上につながります。
電気工事の際に起こりがちなトラブル
電気工事の際に起こりがちなトラブルは「工事費用の安さを重視するあまり、業者を適当に選んでしまった」「電力の過負荷による停電やブレーカーが落ちる」などです。
以下の通りです。
・ケース1:業者が手抜き工事を行なってしまい、営業中に漏電が発生してしまった
・ケース2:電力の過負荷による停電やブレーカーが落ちる
以下で詳しく解説します。
ケース1:手抜き工事により配線がめくれ、営業中に漏電が発生した
電気工事を依頼した業者が手抜き工事を行なってしまい、営業中に漏電が発生してしまったというケースがあります。
配線の緩みや断線、接続不良が発生してしまうと、電流の流れが乱れて配線や接続部分が過熱し、電気設備の故障や火災を引き起こしてしまう可能性があります。
配線が緩んだり断線が発生している場合は、早めに修理を依頼して電気の流れを正常にしてもらいトラブルを未然に防ぐことが重要です。
ケース2:電力の過負荷による停電やブレーカーが落ちてしまった
電気工事費用の安さを重視するあまり、施工実績が少ない業者に依頼した結果、確認ミスにより停電やブレーカーが落ちてしまったというケースがあります。
消費電力100Vの機器を200Vのコンセントにさしてしまい、電力供給が許容量を超えた結果、停電やブレーカーが落ちてしまったというものです。
ブレーカーが落ちる原因としては、新たな機器を追加したり、テナントの改装により電力消費量が増加すると、これまでの設計では対応できないほどの電力が回路に流れてショートする場合や、適切な容量を持つ配線を選ばないまたは、適切に設計していないなどの理由で、電力に過負荷が生じてしまうというものです。
このトラブルを防ぐには、電力の消費量を計算し、回路やブレーカーの要領を適切に見直すまたは、電流の分散を考慮して配線を設計する必要があります。
電気工事したテナントの退去時は?
電気工事をしたテナントを退去することになった場合は、以下の対応をすることが必要です。
電気工事を行なった後、スケルトン工事を行う場合は、賃貸借契約に記載されている範囲を確認して工事を行いましょう。
スケルトン工事を行う場合は、坪単価3万円〜5万円前後、テナントの階数や撤去する設備の量によっては坪単価10万円近くの解体費用がかかるため注意が必要です。
また、居抜き状態で退去できる場合は、新しく設置する設備と既存の配線やブレーカーが適合するかを確認するなど次の借主の方が使いやすいような電気工事を意識して行いましょう。
まとめ|失敗のない電気工事をしましょう!
テナントの電気工事は店舗営業や事業に欠かせない電化製品や通信設備などを使用可能な状態にする工事のことです。
テナントの電気工事を行う際は、「なぜ電気工事を行うのか」「電気工事の予算はいくらにするか」などの目的を明確にして適切な業者に依頼することが大事です。
そして、失敗のない電気工事を行うためにも、今回ご紹介した電気工事をする上での注意点や電気工事を行う際に起こりがちなトラブルについてしっかりと把握しておきましょう。