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定期借家契約とは?意味やデメリット等

2023.01.25


定期借家とは、契約期間に定めがある借家契約のことです。貸主の事情や意思によって契約期限になったら契約を終了させることができる借家制度になります。

定期借家契約とは

契約期間に定めがある借家契約のことです。貸主の事情や意思によって契約期限になったら契約を終了させることができる借家制度になります。

※「借家」とありますが、「店舗物件」の賃貸借契約にも通用します。

~退去について~
通常の契約(普通借家契約)の場合、更新契約を締結せずに契約満了日を迎えても契約は自動で更新され(法定更新)、正当な事由がない限り、貸主側が入居テナントに退去を求める事は容易ではありません。一方で、定期借家契約の場合、貸主側が(当然借主側も)契約終了の意思を、定められた時期までに通知すれば、期間満了により契約は終了し、更新されません。

~再契約~
もちろん期間に定めがあるからといって、入居者は定期借家契約の期限が来たら必ず退去しなければならないのかというと、必ずしもそうではなく、退去日までに貸主と借主がともに新しい契約条件に合意すれば、入居し続けることができます。この場合は、普通借家契約の場合に見られる「更新」ではなく、期間を満了して再度契約を結ぶ「再契約」という形をとなります。

つまりは、定期借家契約とは貸主の事情や意思によって契約期限になったら契約を終了させることができる借家制度ということです。

1.定期借家契約の背景

定期借家契約がなかった時代には、前述の通り、一度入居させてしまうと、貸主の側で退去を求めることは、非常に難しいものでした。結果として、空き物件が出ても、将来の事を懸念した貸主がそもそも入居者を募集せず、空けたままにして、物件のリーシングが停滞するような事態が起こるようになりました。このような状態を回復して不動産の流動化を進めようと、貸主の貸し方のニーズに応える為に生まれたののが定期借家制度です。生まれてから、それほど時間がたっておらず、未だそれほど一般的なものではないかもしれませんが、首都圏の繁華街を中心に、定期借家契約の物件は年々増えて来ています。

2.テナントにとっての定期借家契約のデメリット

中途解約

店舗として使用する物件で、定期借家契約の場合、中途解約に関する規定がなければ借主は原則として中途解約することが出来ません。そのため、中途解約の規定などが無い定期借家契約で中途解約をする場合、契約満了までの残りの期間分の家賃を請求される事があります。

投資回収

店舗として物件を賃借する場合、内装工事や造作など、当然設備投資を行う必要が出てくるもので、店舗の運営計画は、その投資の回収期間とその後の収益を見込んで立てるものです。その意味では、契約期間を借主側の意思だけでは決められない(自動更新がない)定期借家契約においては、契約期間内に投資回収及び収益を上げられる計画を立てる必要があります。

3.テナントにとっての定期借家契約のメリット

上記のような要素から、入居するのに定期借家契約を結ぶ必要がある物件は、物件を探している人々からは敬遠されがちです。ゆえに、そのような事情を勘案して、募集の際に入居を促す為、定期借家契約の物件は相場(普通借家契約の物件)よりも賃料等の条件が低めに設定されることがあります。

4.貸主の意向から見る定期借家のタイプ

(退去リスク高)



(退去リスク低)

①確実型

特定の期間までに契約を終了する事が確実な場合。
例)〇年先に物件を立て壊す予定が具体的にあるケース

②可能性型

契約を継続するかどうか、その契約終了時期が迫ってくるまで、判断を保留する場合。
例)いずれ物件を売却する可能性があるケース
例2)将来的に都市計画等で立ち退く事が決まっているが、それがいつごろなのか(退去が必要となる時期)が契約時点では具体的にわかっていないので、一定の契約期間で区切り、その都度再契約するかどうか判断する必要があるケース

③運用型

貸主の側がテナント入れ替えの裁量を常に持っておく必要がある場合。
例)商業施設等は、貸主(運用者)が、収益や売買等の物件を取り巻く状況や施設全体のコンセプト等に合わせて、テナントの構成および入退去を管理する必要があるため、定期借家契約となるケースが多く、特に繁華街立地の場合にはその傾向が強いです。

④念のため(トラブル回避)型

貸主が、借主とトラブルがあった際に賃貸し続けなくてはならない状態に陥るのを、避けたいと考える場合。
補足)貸主にとっては、普通借家契約で賃貸してしまうと正当事由がないと退去を求められないため、例えば、借主の素行が悪く近隣とのトラブルがあったり、または賃料の支払遅延があったりしても簡単に退去させることはできません。一方、定期借家契約では、契約満了時に貸主と借主との関係が清算されるため、再契約交渉時に上記のような理由があるため、再契約しないと貸主が判断できます。そのため、こういったトラブルを回避できるよう、念のため、定期借家契約にしたいというケースがあります。
⇒こういったケースの場合、トラブルがなければ、借主として実質的には契約の継続が見込めます。

5.普通借家とのその他の違い

期間を1年未満とする建物賃貸借契約

普通借家契約の場合、1年未満の契約は有効ではありません。(期間の定めのない契約とみなされます。)一方、定期借家契約であれば1年未満の契約も有効となります。

建物賃借料の減額請求に関する特約の効力

普通借家契約の場合は、特約にかかわらず、周辺賃料相場等を根拠に賃借料の減額請求を行うことが可能なのです。しかし、定期借家契約の場合は賃借料の減額を行わない旨の特約が有効であるため、その特約がある場合、入居者は定めに従い契約期間中の賃料の減額請求が出来ません。

6.定期借家契約の占める割合

定期借家契約が施行されて凡そ20年弱が経ち、現在では、この契約形態に関する認識も一般にある程度定着してきたと言えるでしょう。しかし、用語や概要は知っていても、その実態について理解している方はそれほど多くはありません。

では、店舗物件の中で定期借家契約を採用している物件は、全体の中でどれほどの割合を占めているのでしょうか?(弊社でこれまでに取り扱っていた店舗物件に限った話ですが)過去約33,000物件の契約形態を調査しましたところ、定期借家契約で募集されていた店舗物件は、全体の約34.9%でした。この数値を多いと見るか少ないと見るかは、人によるのかもしれませんが、定期借家契約を採用している物件の数が全体のおよそ数%と言われている賃貸居住用物件と比べれば、極めて高い割合と言えるでしょう。

店舗物件の定期借家契約割合が高めである理由については、正確にはわかっていませんが、あえて理由について推測をするのであれば、「店舗物件の多くは法人契約であり、貸主が退去を迫ろうとも、投資回収や企業利益の観点から、入居者の側が入居の継続を強硬に主張し係争となりやすい」「不特定多数の人の出入りのある店舗物件においては、近隣とのトラブル(匂い、騒音等)がおきやすいため」「商業施設等の場合、ビル内の構成テナントを所有者(あるいはPM会社)の側で、コンセプトに従い、一定時期ごとに入れ替えたりする必要性がある」などが考えられます。

7.定期借家契約の流れ

実際の契約の「手続き」においては普通借家とはそれほど異なりません。
大まかに言って手続き上の違いが出るのは「入居時」と「契約満了時」です。

入居時

38条書面:
定期借家契約を締結する際、貸主は借主に対して、「契約更新がなく、期間満了により当該建物の賃貸借が終了すること」についてその旨を記した書面(通称38条書面)を交付して説明する義務があります。この説明を受けていないと、契約は普通借家契約とみなされる可能性があります。

契約期間満了時

⇒退去する場合
賃貸人は、(1年以上の契約期間を持つ)定期借家契約の期間が満了する、1年前から6カ月前までの間に契約が終了する旨を通知しなければなりません(通知期間)。賃貸人がこの通知を怠った場合、賃借人は契約期間を過ぎても、それまで通り入居し続けることが出来ます。もしその後、賃貸人が通知期間経過後に契約期間満了の通知を追って出したとしても、賃借人は、その日から6ヶ月間は、入居し続ける事が出来ます。

⇒入居を継続する場合
契約期間満了前に賃貸人と賃借人の間で協議し合意にいたれば「再契約」をする事が可能となり、賃借人は次回契約満了まで入居を継続することとなります。

8.まとめ

いかがでしたでしょうか?定期借家契約における最大のポイントは、契約満了に伴い退去を迫られる場合です。店舗物件に入居したテナントは、大抵の場合、投資(内装設備工事等や販促)を必要としますので、単に引っ越せば良い住居などとは違って、再契約できず退去を余儀なくされた際の影響がとても大きなものとなります。入居者は定期借家契約を、暗黙に再契約可能な契約形態である、などと誤認識していると、痛い思いをするかもしれません。逆に定期借家契約は期間を満了したら必ず退去しなければならない契約形態である、などと誤解してしまい、入居を避け、選択の幅を狭めてしまう事もまた、得策ではありません。入居を検討している物件が定期借家契約であった場合は、予め定期借家契約の仕組みや原則自体を理解しておくのはもちろんのこと、そのリスクについて認識しておき、その物件が定期借家となっている理由や状況について確認し、妥当と思われる判断を下す事が重要となります。